『Idaho Transfer』(1973)

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『Idaho Transfer』(1973)

 ピーター・フォンダ監督のSF映画ピーター・フォンダなのだからさぞかし面白い映画であろうと思ったらトンデモない、意味不明で頭が痛くなってくる酷い代物でした。こんな映画ばっかり見ていたら、あなた、人生の道を踏み外してしまいますよ!

溶岩で覆われた荒野、ここを蛇がずろずろと這っています。と、若い男がこの蛇を棒の先にわっかになったロープのついている捕獲器具で捕らえます。そしてタグをつけてまた逃します。どうやら彼はここで何らかの調査をしているようです。男はトランシーバーを使って仲間の若い女イーサ(キャロライン・ヒルデブランド)に連絡します。イーサはノートになにやら書き込んだのちに「じゃ、あたし、先に帰るから」どこへ帰るのかといいますと、これが重たい鉄の扉をスライドさせて地下へ降りていくという。その中にはベンチがあって、正面の壁になにやら操作パネルがついております。イーサはやおら靴を脱ぎ、ズボンを脱ぎ(笑)、ノートパッドと一緒に金属の箱へ収めます。パンツ見せたイーサ、ベンチに跨って操作パネルのボタンをスイッチオン。するとなんということでしょう、イーサの姿がゆらゆら揺らめいて消えてしまったではありませんか。

 この時カメラはベンチに跨ったイーサをわざわざ正面から撮っております。そんなにパンツを映したいのか、お前は。

 再びイーサが現れました。しかし一瞬のうちに周囲の様子が変わっています。ここは地下の研究施設のよう。ベンチから降りたイーサは金属の箱からズボンとブーツを取り出して身に着けます。そして重そうなドアを押して外へ。一体何が起こっているのかと申しますと、これがトランスファーと呼ばれるタイムトリップだったという・・・。彼らはあのベンチ型タイムマシンを使って今から56年後の世界と現在を行き来していたのです。その56年後の世界は溶岩に覆われた死の世界でした。まったく人の生存が確認できなかったのです。つまり今から56年の間に全世界的なカタストロフィが発生、地球は死の星となっていたのです。この研究施設の科学者たちはこの事態を避けるために大勢の男女をトランスファーさせて56年後の世界に再び文明を再建しようとしていたのでした。

 このタイムマシン、金属のものを身につけたままタイムトリップすることはできません。眼鏡やズボンのジッパーも駄目。イーサがズボンを脱いでいたのはこういう訳だったのです。女性のパンツを見せて客を引こうなんぞというさもしい意図があってのことではないのです。皆さん、分かりましたね。

 イーサはこの後父親のジョージ(テッド・ダーマス)とお話。この会話で彼らはこの研究を政府に秘密にしていること、イーサの妹カレン(ケリー・ボーナン)が研究に加わることが分かります。喜んでカレンを迎えにいくイーサ。そして車でドライブです。この車中で話される会話が凄い。「カレン、あなた、恋人は」「いないわよ」「え、じゃあ、まだバージンなの」「姉さん、聞いてなかったの?私数週間前にレイプされたの」え、えええ、いきなりなんでこんな話に?いちおう、このトラウマでカレンが人を信用できなくなってしまったということらしいのですが、あいにく、この伏線あんまり生きていないんですよね(笑)。それにイーサもさらっと流すな、レイプだぞ、もっと驚けよ。

 このドライブの最中、男女のヒッチハイカーをピックアップ。このフリーでオーガニックでエコロジカルな生活を送っているヒッピーを意味ありげに見つめるイーサとカレン。何か起こるのかなと思っていたらあにはからんやあっさりと降ろしてしまったのです。

 研究所に戻って飯を食い、ようやくトランスファーする姉妹。ちゃーんと今度も二人ともズボンを脱ぐのでご安心下さい(笑)。カメラだって股広げて座っている彼女達の正面から映しますとも。

 初めてのトランスファーに不安そうなカレンでしたが、無事に未来に到着。二人は早速調査を開始します。ところがこの時イーサが足を滑らせて岩の割れ目に落っこちてしまったのです。後頭部を激しく打ち付けてイーサ。カレンは慌てて彼女を助けトランスファーで戻ります。ところがこの時研究所には誰もいませんでした。「誰か、助けて、姉さんが大怪我したのよ」誰も見つけられずトランスファールームに戻ってきたカレン。彼女の目が大きく見開かれます。なんとイーサがゲロを吐いて死んでいたのでした(大笑い)。

 これからぱっと時間が過ぎまして、カレン、姉の死を直視するのがイヤでずーっと未来に行っております。仲間たちが持ってきてくれるジョージの手紙も無視。彼女は仲間たちの中で孤立しています。

 さて、未来移住計画が本格化。一度に20名ほどの男女がトランスファーしてきます。まだ赤ん坊もいないのに「未来にはないから」と行ってわざわざ乳母車を持ってくる慎重さがオカシイ。この時彼らの会話から研究所の秘密がついに政府に洩れたらしいことが分かります。実際、政府のエージェントに仲間が何人も捕まっているようです。

 ここでカレン、仲間たちがいなくなったのを見計らって現在へトランスファー。何をしたのかというとトイレで自分の体を水で拭いてトイレットペーパーを調達していたという・・・(笑)。たしかにあんな未来ではちゃんとしたトイレットペーパーの確保は難しいですからな。しかし、この時既に研究所は政府の管理下におかれていました。警報がなって警備員が駆けつけてきたのです。カレン、大ピンチですがその彼女を救ったのが偶然居合わせたロナルド(ケビン・ファースト)。彼はカレンを助けて一緒にトランスファー。なんとか逃げ延びることができました。これで二人は仲良くなって「寒いわ」「僕が温めてあげよう」とかなんとか言っちゃって抱き合うのでありました。

 カレン、トイレの体洗いの場面でおっぱいポローン。結構嬉しかったですね(笑)。

 ところがこの後研究所の方からスイッチを切られたらしく、タイムマシンは動作不能に。仲間たちは相談の上、手分けして地球の生存者を探しにいくことになりました。彼らはタイムマシン警護のために二人を残し荷物を持って歩き出すのです。

 この後すぐに別れてしまう仲間たち。カレンなんかロナルドと二人っきりですよ。なんでみんな一緒に行動しないんだ。ここからだらだらと歩くカレンとドナルド。いつまでも歩いています。何時もより余計に歩いております。そしてついに二台の朽ち果てた自動車を発見、調べ始めるのでした。

カレンは車に乗り込みます。そしてキーがついたままなのを見つけて「ロナルド、鍵よ、車盗みたくない」という実につまらない冗談を言います。その後後部座席に乗っていた子供のおもちゃやぬいぐるみをみて途端に感傷的になったカレンは車を飛び出すのでした。

 その後もだらだらえんえんのんのんずいずいと荒野を歩く二人。途中でサバイバルハンドブックを見ているロナルドが笑えます。そして次に彼らが見つけたのは古ぼけた貨車の列でありました。ロナルドはここを調べようとするのですが、カレンは「いやー、あたし超疲労だから行きたくない」なんてことを抜かしましてロナルドと観客をむっとさせます。仕方なしに一人で調べにいくロナルド。

 ここで彼らの後を追っている二つ目のグループに場面が変わりまして、メンバーのうち、ルイスが失踪したという騒ぎになります。このルイス、腎臓を悪くしておりましてこのままではみんなに迷惑をかけてしまう、そうなる前に離れて一人で死のうということらしいです。

 また場面が変わって列車を調べるロナルドになります。ロナルド、貨物車の扉をがんがん石で叩きましてなんとかこじ開けます。カメラは貨物車の反対側から映していますのでその内部は見えません。ここでどーんと深刻そうなBGMがなります。内部は見えないけれども、これで何か大変なものを見つけたことが分かります。カレンの下へ戻るロナルド。「何があったの」私も興味しんしんです(笑)。「プラスティックバックに入ったたくさんの死体さ。どうやらどこかへ死体を纏めて輸送していたらしい」

 そうするとこの全地球的なカタストロフィというのは疫病の発生だったのでしょうか。感染を恐れた生存者たちが死体を処理するために運んでいたのでしょうか。でもこの謎は最後まで明らかにされませんので考えても無駄であります(笑)。

 この後突然、カレンは「私妊娠したみたい」びっくりするロナルドです。まあ、絶対ロナルドとの子供だと思いますな。ところがカレンたら「アーサーの子供だわ!」「はあっ?」愕然とするロナルドと観客達。私は思わず「アーサーって誰?あ、そうだ、キャンプに残った男だ」

 この訳の分からない妊娠事件の後、他の男女と合流するカレンとロナルド。後からやってきたグループはどうも精神遅滞があるらしい女性を連れております。なんと、この女性、たった一人見つかった生存者なのです。いや、彼女を見つける場面とか全然ないんですよ。いきなりみんなの中に一人いるんですよ。それで生存者でございとか言われても納得できませんよ。カレンは他のみんなに向って「私妊娠したの」宣言。しかし皆は顔を見合わせて「おい、ロナルド、言ってなかったのか」ロナルド、非常に苦しそうな顔をします。「あんまりカレンが嬉しそうなので言えなかったんだ」

 なんと、トランスファーの影響で全員不妊になっていたのです。な、なんじゃ、そりゃと同時に叫ぶ、カレンと私。そんなの最初から絶滅した人類を立て直すという計画そのものが成り立たないじゃないですか。絶望したカレン、塞ぎこんで皆から離れてしまいます。

 そしてこの女はついに決意。皆が寝ている間、ありったけの水のボトルを盗んで一人、タイムマシンのあるキャンプに戻っていったのです。これ以降、ロナルド他のメンバーはお役御免となります。いくらなんでもそれは酷いです。カレン、また延々と歩いてついにキャンプに到着。彼女はキャンプに残っている筈のアーサー、ジェニファー、そしてもう一人の女を捜すのですが何か様子がへん。蝿がぶんぶん飛び回っております。人類絶滅してもちゃんと蝿がいるらしいです(笑)。その羽音をたどったカレン、穴のそこで死んでいるもう一人の女を発見。さらにタイムマシンの中でアーサーが死んでいるではないですか。

 なに、これ、いや、キャー!悲鳴を上げるカレン。この時突如として発狂したジェニファーが襲い掛かるのです。カレン、タイムマシンへ逃げ込みます。中から鍵を掛けたのですが、タイムマシンは作動停止中。これではどうにもならないわとすすり泣くカレンですが、この時突然、タイムマシンが復帰したのです。喜んだカレン、急いで服を脱ぎタイムマシンを作動させ現代へ戻るのでした。

 研究所ではトランスファールームで警備員がお弁当を食べていました。彼は突如現れた上半身裸の女を見てびっくり仰天。ひゃああとお弁当放り出して助けを呼びに行ったのです。カレンは警備員に向って「助けて、私はみんなが死んでしまう前の時間に戻らなくてはならないの、やり方教えて」警備員は彼女の言葉を一切無視、ばーっと逃げてしまいます。舌打ちしたカレン、どうしたのかというと食べかけのお弁当で腹ごしらえした後、テキトーにタイムマシンの操作盤を弄り始めたのです。そして一応セットできたと思ったカレン、再びトランスファーするのです。

 ちなみにこの操作盤、テプラでダイヤル類の名前が貼り付けてあります。言いたくないけど恐ろしくショボイです。

 さあ、トランスファー終了。外へ出るカレン、しかし様子が変です。キャンプに立てていた旗の金属製ポールがぼろぼろになって倒れています。死体も骨になっています。そうです、この馬鹿女がテキトーに操作盤弄ったために、彼女はみんなが死ぬ前どころか、さらに未来にやってきてしまったのです。

 呆然として歩くカレン。といきなり未来風の男が現れて彼女を拉致、未来風の車のトランクに放り込みます。未来風の男は未来風の車に乗り込んで発進。未来風の車の中には未来風の奥さんと未来風の女の子がいました。未来風の女の子は未来風の男、お父さんに話しかけます。「ねえ、お父さん、彼らはもうすぐいなくなっちゃうって本当?そしたら私たちは何を食べればいいの」どうやら、この未来風人類、旧人類を食料やエネルギー源として使用している模様。未来風お父さんは未来風女の子に応えます。「いま、他の方法が考えられている。心配することはないよ」しかし未来風の女の子はさらに「でもそのほかの方法が上手く行かなかったらどうするの、私たちは共食いになるの」

 この訳の分からないラストで映画はおしまい。あ、ちょっとちょっと私はこの映画を紹介しただけなんだから、私に怒ったってしょうがないでしょ、ちょっとちょっとやめてくださいよ。ああ、ぶたないでぇ!

カラー・スタンダード モノラル音声 これも音声が酷いなあ。バックグラウンドノイズが大きくておまけに音が歪んでいる。私もよくもこんなDVDにつきあうものです(笑)。12枚のディスクに50本の映画を収めたNightmare Worlds 50 Movie Pack Collection。Mill Creek EntertainmentのDVD。