2011-03-01から1ヶ月間の記事一覧

楳図かずお『わたしは真悟』、想像力の臨界点

楳図かずおの神髄はやっぱりすれ違いだ、と思う。読者と作者がすれ違う、登場人物もすれ違う、交錯する。登場人物たちは最善を尽くそうとするが、安易な幸福が彼らに訪れることはない。そうした幸福を読者である私も少なからず望んでいる。でも楳図はそれを…

『セックス・ハンター 濡れた標的』、夷敵を殺す本性

良作。 脚本は大和屋竺。プロット自体は70年の『野良猫ロック セックスハンター』とほぼ同じ。姉を米兵にレイプされたおかげで不能になり、外国人やアイノコに異常な執念を見せる主人公には、かつて藤竜也が演じたバロンの面影がある。主人公は米兵に復讐…

『暴行切り裂きジャック』、クレジットの美学

長谷部安春監督作、傑作。 ケーキ屋で働く男がある女性店員を家まで車で送ってやる途中、雨の中にたたずむ女を乗せる。その女は体にケーキをぬりたくり、体にケーキナイフを突き立てる。ここは『悪魔のいけにえ』を彷彿とさせるおぞましさ。女を車からひきず…

『ハードコアの夜』、愛を求める

ポール・シュレイダー監督作。 『キャットピープル』の音楽が『イングロリアス・バスターズ』で使われたり、と再評価につながればいいな、と思う監督である。 失踪した娘を探すうちにハードコアポルノの裏の世界に足を踏み入れていく父。この手のテーマは『…

『県警対組織暴力』、淘汰される不条理

何よりもオープニングが素晴らしい。 ヤクザである松方弘樹の男気に惚れてべったりと癒着している警官の菅原文太が、組の若い者に「お前ら捕まえるなんて税金の無駄遣いじゃ、さっさとぶっこんで死んでこい」と激を飛ばすという相当に無茶苦茶なシーン。そこ…

『箱の中の女 処女いけにえ』、政性恐戯

『花と蛇』、『生贄夫人』の小沼勝、その一つの到達点である。 小沼はほんとの変態だと思う。『生贄夫人』の異常性欲者もかなりアレだったが、この映画はもっとひどい。被害者が最終的には完全に異常者になってしまい、真の奴隷になる過程が生々しく描かれて…