大相撲名古屋場所中継中止について

友人と議論になったので、ちょっとまとめて載せておきたい。
議論になったのはタイトル通り、大相撲名古屋場所の中継が中止になったこと。
確かにここ数年、様々な不祥事がニュースになってきただけに、ここにきて賭博の話が決定打になったみたいだ。

ただ私がなんでこれに拘泥しているか、というと中継中止の理由が抗議がたくさん来た、という風にしか説明されなかった点にある。約1万6千だかの抗議が来て、それらが「中継に反対する」と訴えていたから、中止するということに疑問を感じた。100%で考えれば、68%が中継中止で、中継に賛成する人は残りの13%。なので口をつぐんだ人は残りの19%ということになる。このグレーゾーンの少なさ、みんな意見を言うようになったのはいいけどね。
一つずつ書いていこう。まず中継中止は正しい判断であるのか。相撲業界のゴシップは確かにここ数年、よく目立って私達の耳目を楽しませた。大麻、暴力、殺人ときて賭博。文字通り、やくざ映画の世界さながらでもある。
この場合、相撲業界に不満、義憤を感じる人々が「のんきに相撲やってる場合じゃねえだろ」と怒るのは当然だ。が、冷静に考えてみてほしい。全ての力士がそういった犯罪に手を染めているわけではない。この名古屋場所に勝負をかけている力士も多いだろうし、心待ちにしているファンも数多い。そして何より、中継をやめろ、とNHKなんかに訴える前に相撲協会に前述のごとく、「場所を中止して反省しろ」という抗議の方が筋が通っているとは思えないだろうか?
が、名古屋場所は中止されずに普通に行われる。もちろん問題を起こした力士たちは出場を辞退するだろう。となれば、確かにNHKに抗議が行っている今の状態もわからんでもない。が、またここで落ち着いて考えてみてほしい。
NHKで放映されない、ということはリアルタイムでは場所に行かない限り、その試合を誰も見る事ができない、という状態が出来上がってしまうことを意味する。それは相撲業界のゴシップにも耐え、それでも試合を見たいと思っているファンの気持ちを損なう抗議ではないだろうか。力士も(これも上に書いたが)、そのようなゴシップにまみれた世界にいるにも関わらず潔白を保ち、日々稽古に励み、場所に挑む者たちも多くいるはずで、そのような力士を私達が目の当たりにすることが(人の見る権利を奪う抗議によって)できなくなるとしたら、それをいきすぎな意見というのは間違いだろうか。そのような力士たちを見たいというのはおかしいことだろうか。

NHKの中継によって獲得される大枚がやくざに流れるのではないか、という意見もあるだろう。だとすれば、それこそNHKもしくは相撲協会にいくべき批判となる。相撲協会に「頼むからヤクザと関係を切って下さい」だとか「不祥事を起こさず相撲をがんばってください」だとか、そういう抗議こそが礼儀正しい抗議であって、中継を中止するという要請は度を過ぎている。もしくはNHKに「私達が払っている受信料を大切に使って下さい」という抗議、これらは一般社会に住む私達にこそ許される抗議形態だ。何故ならNHKなり相撲なりを支えているのは私達に他ならないからである。もし受信料がやくざにいっていたり、先の映画のようにシーシェパードにいくことがあっても私達にできるのはそのような嘆願であるべきで、それでもうまくいかない場合に今回のような他の権利を損なってまで通る主張というのは存在しているかも知れない。
丁寧で礼儀正しい抗議がもし1万6千もいくことがあれば、少なくとも少しは今の状態が改善されることはあるだろうと想像する。変わることはなくても地道にやっていくしかない。

中継中止だとか上映中止といった本質的でない議論があまりに大きくなることで、そのような他の隣人の権利を損なう抗議でしかこの世界を改善できないような世の中にはなってほしくない、それだけである。