言葉 1. 2.

 言葉というのは、ここ最近において最も議論に値する議題であって、もはや何人もこれから逃れることができない。
 だからといって、別に逃げる人をとっつかまえて拉致監禁暴行その他がどうとかいうことではない。単に私が私の好きな二つの言葉を書き付けていくだけである。

1.

 他人に裏切られるよりも早いスピードで自分を裏切らなければ、人殺し一つ犯罪一つできやしない。
 薔薇色の連帯、それはまず裏切る自分を殺し、同士を殺していくスピード以上の冷徹な力が相集まること。
 その自分だけの力を、相集まった力と同等に信じること。
 裏切る以上に、強いことを知ること。そうすれば死ねる。
           
                     〜『性賊 セックスジャック』 監督 若松孝二
                                    脚本 足立正生
 
2.

Caravaggio  
                     〜Kip Hanrahan作詞
                       和訳朗読 菊地成孔
 君の愛の一番奥の暗い部分
 そこなんだ 俺は一番居心地がいい
 ここ おれの怒りの家と一緒さ
 おれのくつろげる場所 知り尽くしている
 隅から隅まで 要は権力と階級さ
 分かってる
 何だよ ここにも俺のメールは届くのか?
 そう どこかカラヴァッジョに似てる 怒りが息づいている
 真の安息 Real Rest のように
 しかし女よ 君のにおいの暗闇が
 家にいるみたいに俺は心地いい
 そうさ 君のあせの後味
 ぼくらが終わった後のすぐ後の
 まるで 何でも可能なような
 まるで 俺の怒りの家にいるようさ
 ただ菊の香りがするだけ
 この地球から剥ぎ落とされて それでも俺は土くれだ
 生きものたちはあくせく働く 光の欠片をつかもうと
 ある者は主張する この世は自分のものだと
 真っ暗だ
 死は万人に与えられるのに
 どうして生は一部のものだけが保証されるのか
 いや、それでも俺は感じる おれが一番恵まれている
 
 君の愛の一番奥の暗がりにいて 
 そして俺の手の内なる暴力 おれの家なる怒れる夜
 そして俺の娘の瞳の中の天使たち 
 彼女が灯火をつかもうとする 彼女の光が届こうとする
 その手に あと少し 涙が出る
 泣き方もこの俺は忘れてしまったというのに
 けれど女よ 君のセックスの暗闇が
 家にいるみたいに俺には心地いい
 そうさ 君のあせの後味
 愛し合った後のすぐ後の まるで何でも出来るような
 まるで俺の憤りの家にいるようさ
 ただユーカリの香りがするだけ
 
 そして 怒りの我が家にあって
 そこは何もかもが整ったまま正しいのだが
 俺は俺自身を聞く 権力から閉め出された
 怒れる者たちの音楽の中に これで全て正しい
 同じくらい居心地いいよ 君の愛の一番奥の暗がりは
 そして俺の娘の瞳の中の天使たち
 彼女が明かりをつかもうとする
 彼女の光が届こうとする その手に あと少し
 涙が出る 泣き方もこの俺は忘れてしまったというのに
 あの娘の揺れ方 言葉を寄せ付けない、あの腰
 そうさ 世界にはバランスがある
 そうさ 魂はちゃんとある