『ハードコアの夜』、愛を求める

ポール・シュレイダー監督作。 『キャットピープル』の音楽が『イングロリアス・バスターズ』で使われたり、と再評価につながればいいな、と思う監督である。 失踪した娘を探すうちにハードコアポルノの裏の世界に足を踏み入れていく父。この手のテーマは『…

『県警対組織暴力』、淘汰される不条理

何よりもオープニングが素晴らしい。 ヤクザである松方弘樹の男気に惚れてべったりと癒着している警官の菅原文太が、組の若い者に「お前ら捕まえるなんて税金の無駄遣いじゃ、さっさとぶっこんで死んでこい」と激を飛ばすという相当に無茶苦茶なシーン。そこ…

『箱の中の女 処女いけにえ』、政性恐戯

『花と蛇』、『生贄夫人』の小沼勝、その一つの到達点である。 小沼はほんとの変態だと思う。『生贄夫人』の異常性欲者もかなりアレだったが、この映画はもっとひどい。被害者が最終的には完全に異常者になってしまい、真の奴隷になる過程が生々しく描かれて…

『告白』を捨て『ヘヴンズストーリー』を選び取る

ようやくのこと、四時間半にもわたる大作『ヘヴンズストーリー』を観ることがかなった。全くよくもこんな作品を撮れたものだと思う。ラストの歌はあまりに恥ずかしいし、復讐代行人という人物があまりに巨大なノイズとして物語に配されている。光市の事件を…

『冷たい熱帯魚』、素晴らしい世界

近年稀に見るウルトラ暴力映画『冷たい熱帯魚』は確かに最近の欺瞞に満ちた一部の日本映画の風潮に対する、限りない罵倒、嘲笑であり、「癒しという麻薬」に溺れた観客に対する荒治療、リハビリとも成り得る作品だった。私は前評判よりも楽しめなかったが、…

『13人の刺客』、善悪のグロテスク

野島康三という写真家の写真集が昨年出版された。表紙を飾るのは長い黒髪を垂らし、櫛ですく女。顔はほとんど見えず、上裸の小振りな乳房を見せているが、エロティックというよりは不気味さを私は感じた。素晴らしい写真集なので是非、手にとっていただきた…

映画『恐怖』(高橋洋監督作品)について

映画『恐怖』についてのまともな言説というのがあまりにネット上に不足している気がして、何となく思う事をふらふらと書いてみます。まずこの作品に関してあまりに不評な意見が目立ちますけど、皆さん期待してらっしゃることがズレてるなぁという印象です。…

大相撲名古屋場所中継中止について

友人と議論になったので、ちょっとまとめて載せておきたい。 議論になったのはタイトル通り、大相撲名古屋場所の中継が中止になったこと。 確かにここ数年、様々な不祥事がニュースになってきただけに、ここにきて賭博の話が決定打になったみたいだ。ただ私…

『ザ・コーヴ』上映中止について

観る前 どこの誰か知らないけど『ザ・コーヴ』に関して抗議されるのは構わないけど上映禁止なぞお求めにならないで下さい。 私は別にイルカ漁のどうとかプロパガンダがどうとか賛成とか反対とかそういうことでなく、単純に「観てから」全てを決めたいから、…

近況

昨晩、弟とヒルクライムとか西野カナとかGreeeenとかそういう最近の邦楽ヒットチャートを聴いてみた。好事家の自分罰ゲームで、こういうことするから沢山の人から嫌われるのかどうかしらないが、私と私の弟の間では「貴様みたいなクズはGreeeen聴いてろ」っ…

政治について語ること

私達はもちろん政治的な状況の中に生きているのだが、どうしてもそれについて大上段で語ることをためらってしまう。そのためらいとは70年代に燃え尽きた前の人たちがもたらした結果であるとすることもできよう。というよりは、どうも現実と政治の関わり合…

クローネンバーグとラッセル・マルケイの駄作

誰も覚えていないか、観てもいない映画の話である。ラッセル・マルケイは『レイザーバック』でデビューし、その後には『ハイランダー』なんかを撮ってるPV監督あがりの映画監督である。ビリー・ジョエルとかクイーンのPVを手がけたというから大したものだ。…

『サスペリア・テルザ最後の魔女』、アルジェント裏口入門

ダリオ・アルジェントの現地点での(日本で公開されている)最新作である『サスペリア・テルザ 最後の魔女』。これは『サスペリア』(1977)『インフェルノ』(1980)に続く、およそ三十年ごしの三部作完結編で、今までで一番ヘンな邦題がついている…

ポール・シュレイダー Mishima そしてジョン・ウォーターズCecil B Demented

こないだ話してたシュレイダーのミシマですが、日本では観れない作品の有名なものの一つで、これは三島夫人が首をタテにふらなかったからだそうです。とは言ってもレンタル屋に行けば割とすぐ簡単に輸入ビデオが置いてあるので、そういう発禁作品の中ではこ…

『イングロリアス・バスターズ』の煩悶

「騒々しいね」 眼鏡をはずしながら、となりの老人が声をかけてきた。ここは都内の喫茶店で、私は珈琲を飲みながら、眠い目をこすっていたのだった。彼のテーブルの上にはスポーツ新聞と吸い殻が積まれた灰皿、私のテーブルも同じようなものだ。 灰皿、それ…

00〜09年代のホラー映画、私的まとめ

さて、90年代をまとめたし、ようやくここに踏み込んでいこうと思う。今、現地点からホラー映画を語るということについては、ホラー映画という映画の総体がもはやジャンル映画的な枠組では相対化しえず、かつてのように怪談映画と怪奇映画だけを取り扱うこ…

90年代のホラー映画、その私的まとめ

映画に関する有名な逸話としてよく蒸気機関車の話がある。お聞きになった方も多いと思うが、機関車が画面に向かって進んでくるのを観客が観て、会場から逃げ帰った、という話だ。また最近読んだ別の話では20年代に初めて「クローズアップ」が発見された時…

『空気人形』批判

いや、全然そんなん観てる場合じゃあないんだけど、最近は全然関係ないものを読んだり観たりしてしまう。そういうわけで観てしまった。 んで、これから観る、という気がある人は以下、ネタ割りますんで、是非読まないで下さい。さて、日本映画日本映画っと。…